相続のとき、やってはいけないこと。

2018/04/19

相続で、これだけはやってはいけない、ということ。
何だと思いますか?

早速書いてしまいますが。
答えは「持分相続」です。

被相続人(お亡くなりになった方のことです)が所有していた不動産がいくつかあったとして、これを複数の相続人の方で分けるとしましょう。
全部売ってお金にしてしまわない限り、モノの状態のまま公平に分ける、というのは難しいですよね。
どれほど公平に分けたつもりでも、必ず「あっちのほうが良かった」「こっちのほうが良かった」という話は出てしまいます。
これは仕方がないことだと思います。不動産の価値は、それぞれの価値観次第という面がありますから。

 

例えば、

①A駅から徒歩5分、築5年の木造2階建アパート一棟。
土地50坪、建物は20㎡の1Rが8室。現況満室。
賃料収入は月48万円。

②A駅から徒歩10分、築30年の鉄筋コンクリート5階建マンション一棟。
土地30坪、建物は45㎡の2LDKが10室。現況7室賃貸中。
賃料収入は現状で月70万円。

③B駅から徒歩10分の土地、現況駐車場。
土地100坪、12台満車で賃貸中。
賃料収入は月24万円。

④B駅から徒歩15分の自宅。築30年の木造2階建。
土地50坪、建物120㎡の庭付き駐車場付き5LDK。

 

これだけの不動産をお持ちのお父様が亡くなったとして、お子さん3人で相続する。
(お金持ちの話とは言え)よくある話だと思います。

さて、この財産を誰からも不平不満が出ないように分けること、できそうですか?
私は、恐らく難しいと思います。

賃料収入だけならば、一見②が一番良さそうです。
でも築年数が古く、空室が出始めていますね。結構な修繕費もかかる築齢に差し掛かっていそうです。

土地の広さだけなら③ですね。
現状の収入は低いですが、更地ですから修繕費もかかりませんし、もし売りたいと思っても駐車場ですから現金化は簡単です。

①は土地もほどほど、築浅、駅近、というところは良さそうです。長く安定収入が見込めるのはこの物件と思えます。
でも面積だけなら③のほうが良いし、現在の賃料収入で見るなら②に負けます。

これにご自宅まで絡んでくると分けようがありません。
ご自宅に対する思い入れの浅い深いもあるでしょうし、同居されていた方がいれば尚更です。

で、こういうケースでよく行きついてしまう結論が「それぞれ1/3ずつ持分で持てばいいよね」というパターンなんです。
ところが、実はこれが最悪の選択です。

客観的な評価が難しい4つの不動産を不均等に分けずに、それぞれ1/3ずつ持って、賃料収入もきちんと1/3ずつ分けようね、という話ですから、一見すると円満な方法に思えます。
こういう形ですから、当然固定資産税や修繕費などの費用のほうも、みんな平等に1/3ずつ負担するのだと思います。
何が悪いの?と思われるかもしれません。

では、次の相続のことは考えていますか?

皆さん、相続される時はまだお若いので、大抵の場合そこまでお考えになっていないことがほとんどなのだろうと思います。
でも、人間は必ず年を取ります。
いつか、次の相続は来るんです。必ず。

その時、その1/3の持分を相続されるのはどなたですか?
そのさらにお子さん、が普通ですよね。ということは、いずれは「いとこ同士の共有」になってしまいます。
いとこ同士が例えば1/9ずつ持っている、とかの状態になったらどうなりますでしょう?
そのまま1/9ずつ賃料も分けていればいい、では恐らく済みません。相応の時間が経っていますから。

仮に、それが1回目の相続から30年後だとしましょう。
①のアパートは築35年です。②のマンションは築60年です。そろそろ限界でしょう。
ご自宅に至っては築60年の木造です。

じゃあ、売ってお金で分けましょう?
いとこ同士9人に、その相談をさせるんでしょうか。

もう、私の言いたいことがおわかりになると思います。
持分で相続するということは、遺産分割の先延ばしでしかないんです。
次の世代に、その面倒な話を丸投げしているに過ぎない訳です。

1/9ずつ共有している物件を売ろうとする場合、多数決では決められません。一人でも反対者がいると売れないのです。
それどころか、1/3の状態、つまり次の相続が発生する前の段階でも、誰かが売って現金化したいと思った時に他の2人が同意してくれなかったら売ることができない不動産になります。

不動産屋の意見だな、と思われるかもしれません。
ですが紛れもない実態ですし、相続問題に詳しい弁護士さんなども同じことを言われています。
むしろ、プロの不動産業者でなければ手を出せないような状態にすることをできるだけ避け、誰でも買える「健康な状態の不動産」にしておくことが、資産を守る一番の方法だと思います。

(堂田光治)

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